飲食店を開業したい場合は、営業所を置く管轄の保健所に申請をしなければなりません。
目次
飲食店の許可申請に必要なもの
①営業所となる場所が設備の基準を満たしていること(設備要件)
②店舗ごとに食品衛生責任者の有資格者(人的要件)
①設備要件
許可を受けるためには営業を行う営業所の設備が、自治体ごとに定める一定の設備を備える必要があります。
下記は設備要件の一例になりますが、自治体によってローカルルールがあるため細かい要件は各自治体に確認が必要です。
食品取扱室
①天井と内壁
隙間がなく清掃しやすい構造であること
内壁は床から1メートル以上の高さまでは、耐水性材料で作られていること
②床
コンクリートなどの耐水性材料で作られ、清掃しやすく排水がよい構造であること
③手洗い設備
流水式で使用に便利で食品等を汚染しない位置に従事者の数に応じた適当な数が設けられていること。
適当な大きさの受け器及び殺菌剤が備えられていること。
④洗浄設備
流水式で使用に便利で食品等を汚染しない位置に食品などの取扱い数量に応じた適当な数が設けられていること。
具体的には奥行36㎝、横幅45㎝、深さ18㎝の2槽式のシンクで、冷水とお湯の両方が出る必要があります。※必ずしも2槽タンクである必要はないが、2つ以上のシンクは基本的には必要。
ただし、大型の営業所となればこれでは足りないため、数が少ないとして指導が入ることになります
⑤冷蔵・冷凍設備
温度計が見やすい場所に備えられていて、
適切な温度に保存できることが必要です。
⑥廃棄物容器
不浸透性材料で作られた、ふた付きで十分な容量があること。
⑦客席と食品取扱室の間の区画
カウンターなどの隔壁により、客が安易に立ち入れない構造を有すること。
また、客席と調理場は扉などで分けられている必要があります。
客席等
①客用手洗設備
流水式で使用に便利な位置に設けられていること
②従事者用便所及び客用便所
衛生上支障がない位置に設けられていること。従事者(客)の数に応じた適当な数の便器が備えられ、ねずみ、昆虫等の発生及び混入を防ぐ構造設備を有するものであること。
※他の要件にも言えますがトイレは従事者用と客用の便所は兼用できたりと
自治体によって要件が異なることが多いため、事前に保健所へ確認しましょう。
③従事者用及び客用便所手洗設備
流水式で適当な大きさであること
従事者用の手洗には殺菌剤が備えてある必要があります。
④更衣室
従事者の数に応じた更衣室、更衣ロッカー、又は更衣箱が設けられていること。
②食品衛生責任者の有資格者
飲食店の申請をする場合は営業所ごとに専任の食品衛生責任者の有資格者を配置する必要があります。
営業者本人がなることも可能ですが、複数の営業所を持つ場合は兼任は原則できません。
※1階と2階でそれぞれ営業する場合のようなときは認められることもあります。
食品衛生責任者の資格は以下の条件で取得できます。
② 医師、看護師、調理師、食品衛生管理者等の
自治体ごとに定められた資格者は食品衛生責任者とみなされます。
食品衛生責任者の講習は1日で終わりますが、講習の定員は先着順で埋まり次第、定員となるので、食品衛生責任者となる方が決まっている場合は早目の受講をオススメします。
ただし、講習会が満席などの事情で開業にどうしても食品衛生責任者の受講が間に合わないなどの場合は、開業後に食品衛生責任者の講習を受講する誓約書等を提出することで許可を貰うことができます。
この場合、誓約書に記載された期限までに講習を受けて、資格を取得した旨を保健所へ報告する必要があります。
飲食店申請の流れ
事前面談
営業の方針や、営業所の場所の候補が決まったら営業所を管轄する保健所に相談にいきましょう。
管轄の保健所はこちらから調べられます。
なお、法人所在地ではなく営業所の所在地になります。
川崎市に法人所在地を持ち、横浜に出店する場合は横浜の管轄になりますのでご注意ください。
また、保健所への相談のタイミングは必ず物件を決める前にしましょう。
設備によっては、許可が降りないケースもあります。
前オーナーから大丈夫と言われたため、先に契約してしまうケースなどもありますが、
当時と今とでは設備要件が異なっている可能性や、許可の後に前オーナーが手を加えて要件からずれてしまった場合なども考えられます。
契約前に図面などを確認して貰い申請が可能かを相談しましょう。
申請書提出
申請書類のひな形は保健所にて貰えるため、面談時等に貰いましょう。
下記に必要な申請書を例示します。
①申請書
②施設の大要
③平面図・設備などの配置図
④店舗周辺の見取り図
⑤水質検査成績書
⑥食品衛生責任者の資格を証する書類
⑦法人の場合は登記簿謄本が必要になります。
⑦手数料16000円~18000円前後
※自治体により申請書類や手数料は多少異なります
上記の申請書を提出して、一週間以内を目安に施設調査の日程を決めます。
施設調査の時点では特別の理由などがない限り開業できる程度には店内が完成している必要があります。
施設調査
申請書の情報や平面図を基に、
自治体ごとの設備要件を満たしているか、申請書と相違はないかなどを確認します。
この時点で開業できる程度には店内が完成している必要があるので、日程調整などをする際は
ご注意ください。
許可
施設調査後、不備や問題がなければ営業許可がおります。
その他場合によっては必要となる申請
防火管理責任者
店舗及び建物の収容人数が30人以上の場合 防火管理責任者の選任の必要あり
店舗の延べ面積が300㎡以上・・・乙種防火管理責任者
店舗の延べ面積が300㎡未満・・・甲種防火管理責任者
防火管理責任者の資格に関してはこちら
深夜酒類提供飲食店提供届
0時を過ぎて酒類を提供する飲食店は警察署への届出が必要です
風俗店営業許可
キャバクラやホストクラブなど、お客様を接待して飲食する飲食店は風俗店営業として、管轄の警察署に許可を得る必要があります。
申請から開業までにかかる期間
不備もなく、現地調査もすぐに終わるなどトントン拍子にいけば申請から2~3日程度で開業許可が降りる場合もありますが、保健所が多忙な時期は2週間以上かかる場合もあります。
開業後に必要な申請
営業許可には期限が設けられます。
営業所はその期限が切れる前に更新申請を行う必要があります。
また、開業後に以下の変更があった場合は、届出が必要になります。
①営業者(法人)の住所、氏名、屋号、施設設備に変更があった場合
②食品衛生責任者の設置又は変更があったとき
③廃業した時
④営業者(法人)が合併又は分割により事業を承継した場合
⑤営業所を相続する場合
よくある質問
Q、居抜きで買った物件だが、前オーナーから以前許可は取ったと言われたが、
もう一度許可は必要?
A、必要です。また、前オーナーが許可を取得した当時と内装や要件が変更になっている可能性もあるので、契約前に一度保健所に相談することを推奨します。
Q、飲食店と喫茶店はどう違う?
A、食事の提供内容により区別されます。
喫茶店の場合はアルコールの提供が不可、
調理ができない(トーストを焼いたり既製品を出したり等の簡単なものは可能)等
制約がつく反面、設備要件が多少緩和されたりするメリットなどはあります。
喫茶店で申請をして飲食店と同等の営業をしてしまうと違法となるため、
小さくて自分のイメージでは喫茶店だと思うなど自己判断はせずに、
保健所に現状を伝えて判断をしてもらいましょう。
喫茶店の許可を取りながら、飲食店の形態の営業はできません。
詳しくは飲食店と喫茶店の違いを参考にしてください。
Q、調理師免許は必要?
許可の要件には含まれませんが、飲食店を行う上でとても役に立つ資格ですので、取得を試みてもいいかもしれません。