行政書士試験は人気資格として知られる一方で難関資格としても有名です。
そのため、合格率は例年10%前後と常に低い合格率が維持されています。
なぜ行政書士試験はこんなにも合格率が低いのでしょうか。
この記事では行政書士試験の合格率が低いカラクリを解説していきます。
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行政書士試験の合格率が低い理由は?
行政書士試験の合格率は毎年10%前後と言われている難関試験です。
まずは行政書士試験の過去10年分の合格率をご覧ください。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和元年 | 39,821 | 4,571 | 11.5% |
平成30年 | 39,105 | 4,968 | 12.7% |
平成29年 | 40,449 | 6,360 | 15.7% |
平成28年 | 41,053 | 4,084 | 9.95% |
平成27年 | 44,366 | 5,820 | 13.12% |
平成26年 | 48,869 | 4,043 | 8.27% |
平成25年 | 55,436 | 5,597 | 10.1% |
平成24年 | 59,948 | 5,508 | 9.19% |
平成23年 | 66,297 | 5,337 | 8.05% |
平成22年 | 70,586 | 4,662 | 6.6% |
最も低い平成22年では6.6%と非常に低い合格率になっています。
一方で平成29年は15.7%と最近は合格率も上がっているように見えますが、受験者数が減っているため相対的に合格率が上がっているという理由が考えられるため決して合格しやすくなったわけではありません。
行政書士試験はなぜこんなにも合格率が低いのでしょうか。
その理由はただ試験が難しいというだけの理由ではなく、試験制度の仕組みも大きく関わって来ているのです。
そこで、合格率が低い3つのカラクリを解説していきます。
①誰でも受験できる試験のため
行政書士試験には受験資格がありません。
国家資格の多くは学歴や職歴などによる受験資格が設けられているため、誰でも取得が目指せる資格というのは多くはないです。
そんな国家資格の中でも行政書士の資格は難関とは言え誰でも受験することができるため転職やキャリアアップを目指す人たちからも人気の資格の1つとされています。
しかし、受験資格がないということは、「記念受験」や「申し込んだはいいが実際はほとんど勉強ができずに試験に挑む人」も多く含まれています。
むしろ受験生の多くはそういった本気で合格する気のない人たちであるという話も聞きます。
このようにお試しで受験してみるというのも行政書士に興味を持つきっかけになるため決して悪い事ではないとは思いますが、合格者数のデータ上はこのような人たちも受験者数に加わってしまうため、総合的に合格率は下がってしまう訳です。
ポイント
同じ士業の資格である社労士や税理士は難しい受験資格が設定されているため、今後行政書士試験にも受験資格などが設定されるときが来たら、もう少し合格率も上がるかもしれませんね。
②足切り制度
行政書士試験には足切りと呼ばれる制度があります。
足切りとは、総合得点がどれだけ高くても一定の科目が定められた得点の基準に足りなかった場合は合格できないという制度です。
この足切り制度は資格試験で採用されることも多く、足切りがないと一つの得意科目で大きく得点を取って、苦手科目をほとんど勉強せずに合格する者が出て来てしまうため、試験の趣旨である「資格に相応しい実力を持っている者を選ぶ」ための制度とも言えます。
しかし、行政書士試験の足切り制度は他の資格と比べても特にやっかいと言われています。
その理由を説明するために、まずは以下の行政書士の足切りをご覧ください。
行政書士試験の足切り基準
① 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、満点の50パーセント以上である者
② 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、満点の40パーセント以上である者
①の「法令科目」と呼ばれる科目は、行政書士試験のメイン科目であるため、そもそも50%に満たない人は全体の合格基準に達しない場合が多いため、そこまで気にすることはありません。
問題なのは②の一般知識等科目と呼ばれる科目を40%以上得点する必要がある点です。
一般知識とは、いわゆる教養を試される科目で法律科目とは異なる論点から出題されます。
法令科目と呼ばれる民法や憲法はある程度出題範囲が限定されているため対策を立てられますが、
一般知識の出題される範囲は非常に広く、一般知識科目に含まれる「政治・経済・社会」の科目は中学から高校の社会科のテキストからランダムに数問出題されるようなイメージです。
そのため、得点を確実に望める対策というのが立てにくく、運が悪ければ全く得点できない可能性もあります。
とは言っても一般知識の中には、ある程度対策が立てられる「個人情報保護法」からの出題や、読解力次第で正解を取れる「文章理解」も含まれるため、対策が全く立てられないという訳ではありません。
それでも運に左右される可能性が高い科目ではあるため、総合的には合格できるくらいの法令の知識と実力を持ちながら一般知識の足切りに泣く受験生というのも多く、合格率が低くなっている一つの要因と考えられます。
ポイント
時事ネタからの出題もあるため、少しでも得点の可能性を上げたいならば日常的に新聞などを読む習慣をつけておくというのもいいですね
③180点の壁
行政書士試験には180点の壁というものがあります。
行政書士試験の合格基準は「絶対評価」と呼ばれる仕組みが採用されており、300満点中180点を得点すれば他の受験生の得点に関係なく必ず合格する試験です。
それにも関わらず毎年合格率は10%程度が維持されています。
それはなぜかと言うと、180点が一つの壁になるように問題の構成が上手に工夫され、180点の壁を越えられるのが全体の10%程度になる難易度に調整されているからだと考えられます。
行政書士試験の中にも解くのが難しい問題と解きやすい問題があります。
行政書士試験は試験作成のプロが作成しているためそのバランスを上手に調整して本当に実力のある人以外は180点を取るのが難しいような構成で試験が作られているためと考えられます。
試験を適当に作ってたまたま例年の倍以上の合格者なんて出てしまったら、行政書士業界に新人がドッと流れ込み飽和してしまうため、そのような調整をするのは当然と言えば当然ですが、実力はあるのに180点にギリギリ届かずに泣いている受験生も多いですね。
ポイント
全体的によくできていて合格者があまりに多くなりそうなときは記述式の得点のハードルを上げて調整しているなんて噂もありますが、その辺りは公表されていないのでなんとも言えないところですね。
合格率が極端に高くならないように調整されているのは間違いなさそうですが。
まとめ
合格率10%と聞くと、とてもじゃないけど上位10%に入る自信がないと挑戦する前から諦めてしまう人もいます。
しかし、上記で説明した通り、全員が本気で勉強している訳ではないため合格率10%という数字にそこまで不安になる必要はありません。
また、行政書士試験は絶対評価と呼ばれ300点満点中180点を越えれば必ず合格することができます。
そのため、本当の敵は自分自身が180点を越えられるかどうかなのが行政書士試験です。
この壁もきちんと対策を立てて挑めば誰でも受かることはできます。
行政書士試験に合格して人生が豊かになったという人も多いです。ですので合格率に恐れずぜひ挑戦してみましょう。