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特定社会保険労務士になるには
特定社会保険労務士とは近年、不当解雇やパワハラ、セクハラなどの労働環境をめぐって様々なトラブルが問題されることが多くなりました。
裁判外での迅速な解決を目的とし2007年に新たに社労士に付与された比較的新しい制度で、特定社労士になることで個別労働紛争の当事者の労働者の代理人としての権限を持つことができる制度です。
特定社会保険労務士になるためには社会保険労務士として登録後に専門の研修(特別研修)を受講し、紛争解決手続代理業務試験に合格した者のみ特定社会保険労務士として業務を行うことができます。
特定社会保険労務士になるの3つの手順を1つずつ確認していきましょう。
①全国社会保険労務士会連合会の社会保険労務士名簿に登録されていること
②特定社会保険労務士の特別研修を受講していること
③特定社会保険労務士試験に合格すること
①全国社会保険労務士会連合会の社会保険労務士名簿に登録されていること
まずは社会保険労務士試験に合格して社会保険労務士名簿に登録されている必要があります。
基本的にこの名簿に登録されている者を社労士と呼ぶため、社労士試験に合格しただけでは特定社会保険労務士にはなれません。
ただし、登録には登録免許税3万円、登録手数料3万円、入会金が5万円程度(都道府県や活動形態により多少異なる場合があります)が必要となるため、特定社会保険労務士になるために登録するという人はあまりいなく、試験合格後に本格的に社労士として活動する予定の人が登録するというのが主になります。
②特定社会保険労務士の特別研修を受講していること
名簿に登録されている社労士は厚生労働大臣が定める特定社会保険労務士の特別研修を受講することができます。
この講習は特定社会保険労務士になるためには必須のため、ここで特定社会保険労務士の基礎を学習しましょう。
研修内容は合計で63.5時間の講習を受講する必要があり、①中央発信講義②グループ研修③ゼミナールと、3つの講義内容に分類されます。
中央発信講義【30.5時間】
個別労働関係紛争に関する法令及び実務を理解するための講義になります。
講義内容は以下の通りです。
中央発信講義の内容
⑴特定社会保険労務士の果たす役割と職責 0.5時間
⑵専門家の責任と倫理 3時間
⑶憲法(基本的人権に係るもの) 3時間
⑷民法(契約法、不法行為法の
基本原則に係るもの) 6時間
⑸労使関係法 3時間
⑹労働契約・労働条件 8時間
①労働契約総論 (3時間)
②賃金体系と労働条件の変更 (2.5時間)
③労働時間・割増賃金等と
健康上の安全配慮義務 (2.5時間)
⑺個別労働関係法制に関する専門知識 5時間
①退職、解雇、雇止め等
雇用終了の問題 (2.5時間)
②男女均等、セクハラ・パワハラ、
非正規雇用の問題 (2.5時間)
⑻個別労働関係紛争解決制度 2時間
合計30.5時間
グループ研修【18時間】
受講者で10人程度のグループを作り、中央発信講義で学習した内容を基に労働関係紛争の事例を基にディスカッションなどを行いながら申請書や答弁書の起案等をグループごとに行います。
ゼミナール【15時間】
個別労働関係紛争の解決のための手続に関する研修として、50人程度のクラスを作り、講師と対話しながら講義を進めて行きます。
事例などを基に申請書及び答弁書の検討、争点整理、和解交渉の技術及び代理人の権限と倫理等についてロールプレイ等の手法を取り入れて実践的な能力を身に付ける講習です。
③特定社会保険労務士試験に合格すること
研修の受講後は特定社会保険労務士となるための試験である『紛争解決手続代理業務試験』に合格する必要があります。
合格率は最近は60%程度であることが多いため、研修を受けたからと言って必ず合格する試験ではありません。
特定社会保険労務士のできること
特定社会保険労務士になることで社会保険労務士の業務に加えて、労働にかかるADR(裁判外紛争解決手続)において、代理人になれることができます。具体的な業務内容は以下のようになります。
・個別労働関係紛争について厚生労働大臣が指定する団体が行う、裁判外紛争解決手続きにおける当事者の代理(紛争目的価格が120万円を超える時は弁護士と共同受任する必要がある)
・男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)に基づき都道府県労働局が行う調停手続の代理
・個別労働関係紛争について都道府県労働委員会が行うあっせんの手続の代理を行うこと。