行政書士は独立・開業向けの資格だとよく言われますね。
そのため、行政書士試験を合格してすぐ開業をする人もいます。
なぜ行政書士が独立・開業向けと言われるのか、開業後未経験者でも上手くいくのかなどを解説していきます。
行政書士がどのような仕事をするかをまず確認したい方は行政書士とは?仕事内容を解説をご覧ください。
Table of Contents
行政書士は独立・開業向けと言われる理由
行政書士が独立・開業向けと言われる理由として、大きいのは下記の3点がよくあげられます。
・開業がしやすい
・業務に特別な機材が必要ないため
・業務の自由度が高いため
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開業がしやすい
行政書士事務所の開業は非常に簡単です。
行政書士の開業は行政書士試験に合格して、事務所と備品を用意して、あとは行政書士会への登録費用さえあればすぐに開業できます。
事務所は自宅開業の人も多いため、自宅開業であれば事務所にかける費用もなく開業することもできます。
他の士業の場合は試験合格後に数か月の研修が必要であったり、入会金等を払って保証協会への加入が必要だったりするのに比べると、開業の手間自体がとても簡単になっています。
また、開業のために法人を設立する必要はなく、個人事業として営業を行えるというのも魅力の一つでしょう。
行政書士の登録については「行政書士の登録をしないとどうなる?」で登録の流れや必要な費用も詳しく解説しているため、こちらも併せて読んで頂けたらさらに理解して頂けると思います。
行政書士一本でやっていくのが不安だと言う方は、副業として行政書士をやっていくという選択肢もあります。
興味のある方は「行政書士の副業で儲けるサラリーマンの稼ぎ方」も参考にしてください。
業務に特別な機材が必要ないため
行政書士が行う業務は非常に幅が広く、自由度が抜群に高いという魅力があります。
しかも、ほとんどの業務では特殊な機材を必要とせず、パソコンが一台あれば仕事をすることができます。
電子署名と言われるものが必要になる電子定款の作成を行う時など一定の場合には特殊な機材が必要になるケースもありますがそれでも案件としては限られます。
また、上記の電子定款の場合で言えばICカードリーダーやPDF作成ソフト等が必要になりますが、それでも2万円もあれば一通りの機材は揃えられます。
これが飲食店や建設業などの開業の場合は業務に必要な資材や器具を揃えなければいけないため何百万と言う費用がかかりますがそのような費用もかからないため、設備投資や設備を整える手間という面から見ても開業のしやすさが分かります。
また、開業するために従業員を雇う必要もなく、行政書士として開業する人のほとんどが一人での開業のため、人件費コストの心配もありません。
業務の自由度が高いため
行政書士が作成できる書類の種類は非常に幅が広く、一説では2000種類以上とも言われています。
これらの書類は行政書士として登録をすれば、行政書士法で許されている範囲で全て代理で作成できるようになります。
※入管業務を行う場合等は研修を受けて届出済証明書(通称ピンクカード)と呼ばれる証明書の交付を受けなければならない等、一部の例外はあります。
そのため、自分の今までのノウハウや経歴を活かした得意分野で勝負することができたり、他の士業と兼務して業務の幅を広げるなど、自分のやり方次第で色々な営業方法を行うことができるのも魅力的です。
開業しても行政書士業務が未経験で仕事ができる?
まず、行政書士の受任できる業務の中で特別な知識や技術がなければ完成させられない書類というのは少なく、受任してから初めて手引きなどを見て、そこで書類の作り方を調べながら仕事を完遂する場合もあります。
業界歴20年のベテラン行政書士でも、全く未経験の分野の書類を作る際は、経験則からなんとなく方向性が分かるくらいで知識的には新人の行政書士と大差ないなんてこともあります。
そう言った意味では行政書士未経験者でも仕事を完遂するだけならば可能と言えるでしょう。
ただし、ベテランの行政書士となればお客様への細かい配慮やニーズへの応え方、書類の揃え方などあらゆるところで経験の差は出てきます。
どうしてもその辺りは経験していかないと身に着かないテクニックと言えるでしょう。
また、知識がなくとも完遂できる仕事があるとは言いましたが受任する仕事にも難易度の高い仕事と低い仕事は当然分かれます。
難易度の低い分野であれば、国から公表されている申請方法や書類作成の手引きを見ながら書類を作成すれば、シンプルな案件の場合はそれだけで書類を完成させることができます。
行政書士業務を開業したばかりの先生が知り合いからご祝儀も兼ねて簡単な許認可申請の依頼を請け負って、特別な知識もなく国から発行する手引きを見て一から調べながら業務を遂行したなんてケースは多くあります。
しかし風俗営業の許可のように一般的に難しいと言われる許認可申請では、営業所の図面を正確に作成するためにCADを使える専門家に依頼したり、営業所の一定範囲に保全対象施設がないか等、配慮しなければならない事項も多いため、ベテランの行政書士であっても敬遠する人も多いです。
そのため、事前に関係書籍などを読んで請け負う業務が自分の技量に合っているかという判断も大事になってきます。
行政書士開業後のノウハウの学び方
行政書士は資格と事務所さえあればすぐに独立・開業ができるため、行政書士の未経験者でも試験合格後にすぐ開業をする人は多いです。
しかし、一方で「なんの知識もないのに行政書士の業務ができるのか?」と不安に感じている人も多いようですね。
行政書士試験を受験した人ならば薄々分かっているとは思いますが、試験で培った知識というのは実務の現場でそのまま役に立つことは基本的にありません。
では行政書士試験は無駄だったのかと言われればそんなこともないのです。
行政書士試験で勉強した法律の知識はあらゆる業務の根幹です。
その知識の基盤がしっかりしているならば、行政書士のノウハウは必ず自分の力で身に付けることができます。
重要なのはどうやって正しく実務の知識を学ぶかです。
ここからは行政書士実務の勉強方法を紹介していきます。
①書籍で知識を得る
行政書士の実務に関する本は多く発売されています。
なかには「建設業の許可申請の方法」や「遺言の書き方」のように特定の業務に特化した書籍も多く発売されています。
書籍のなかには営業方法や、申請時の注意点など駆け出し行政書士のための実務的な観点からのアドバイスも書かれている書籍もあるため、開業したばかりの行政書士にはありがたいですね。
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行政書士を開業した人におすすめの本を紹介
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書籍で勉強する際の注意点
書籍を参考にして申請書等を作成する場合に注意して欲しいことがあります。
それは、実際に依頼をこなす際は行政機関が公表している「手引き」を基にしつつ、書籍はあくまで分からない範囲をカバーする補助の役割として利用してください。
なぜなら、許認可の多くは自治体によって必要な書類や手続きの流れが若干異なっている場合が多いからです。
書籍の知識はどこかの自治体のルールに統一されて書かれている場合も多いです(東京を基準にしている場合が多い印象です)。
その本に書かれている情報だけを信じて申請しようとしたら、申請しようとする自治体のローカルルールに引っかかってしまったということもありえます。
まずは対応する手引きを見ながら作成してみて、分かりにくい箇所を書籍で補うというのがオススメの使用方法です。
行政書士法コンメンタールは一度は読んでおこう
行政書士として働くならば必ず「行政書士法」を理解しておく必要があります。
行政書士法は行政書士の制度が定められた法律です。
行政書士法を正しく理解せずに業務をしていたら、いつの間にか違反行為をしてしまい処罰の対象になってしまったなんて可能性もあります。
司法書士試験のように試験で行政書士法が出ていればいいのですが、行政書士試験には行政書士法の科目はないため合格後に自分で学ぶ必要があります。
そこで、行政書士法を学ぶためにオススメをするのが「行政書士法コンメンタール」です。
コンメンタールとは法律の逐条解説のことを言い、行政書士法について条文ごとに分かりやすく解説してくれます。
現在は第10版まで出版されており、多くの行政書士の先生方も読まれている有名な書籍ですのでぜひ実務を始める際は一読はしておくといいでしょう。
②研修で学ぶ
行政書士会や士業の先生方が様々な研修を開催しており、行政書士事務所を開業すると研修に関する情報が多く入手できます。
研修では「許認可」や「相続」など様々なテーマの講義が開催されており、講師の方も現場で活躍している方が来てくれることも多いので現場の経験を聞くことができる貴重な機会の1つですね。
書籍などでは分からないところがあったとしても誰にも聞くことができませんが、研修であれば質問時間や講義後に講師の方に直接質問をすることもできます。
さらに、研修には多くの同業者も参加するため交流の場としての役割も兼ねています。
研修後には交流会を開かれることも多く、積極的に参加して名刺を渡すことで交流範囲も広げることができます。
開業したばかりの頃は積極的に研修に出席していきましょう。
③同業の知り合いを作る
業務をこなしていくと、案件によっては手引きや書籍に書いてある内容では対応しきれない微妙なケースというのも多くあります。
そんなときには、同業の行政書士や他の士業の先生たちに助けて貰うというのも一つの方法です。
最初はすべてを自分一人で解決しようとしてしまいがちですが、正直なところ一人の行政書士でできることなんてたかが知れています。
自分の得意分野の依頼が来ればある程度は対応できるかもしれませんが、見たこともないような依頼が来たり、他の士業の分野の依頼が来るなんて日常茶飯事のため、同業の先生方を頼らなければならないという場面は必ず訪れます。
そのため、他の先生方との交流は常に大切にすることが成功への道です。
行政書士の知り合いなんていないよ!と開業前の方は不安になるかと思いますが、安心してください。
上記でも述べた通り行政書士登録後は研修の案内がたくさん来ます。
研修では行政書士はもちろん、他の士業とのダブルライセンスで頑張っている人などが多数来ており、研修が終わったあとには交流会などが開かれることも多いため交流のチャンスは間違いなくあります。
自分なんかが声かけても大丈夫だろうか?と最初は不安になるかもしれませんが、相手も多くの人と交流をしたいという気持ちで来ているため積極的な声掛けと名刺作りをしていきましょう。
それでも声掛けが難しい人は、頭の中でテンプレートを作っておいてそれに従って話をするというのも一つの手ですね。
④実務講座を受講する
行政書士の実務を学べる講座を各資格スクールで実施しています。
実務講座では実際に行政書士として活躍している専門講師などから現場の目線に基づいた講義を受講することができます。
上記の研修会は、どうしてもベテラン向けの研修だったり、欲しい知識を扱う研修がなかったりするときもありますが、このような実務講座は新人行政書士を対象にしたものばかりなので内容自体も分かりやすく新人の目線に立った講義をしてくれます。
さらに、講座にも様々な種類があり、実務講座にあわせてマーケティング技術を学べる講座や、通信教育で自分に興味のある分野の講座だけ個別で販売しているところもあるため、自分の状況に合わせた講座を選ぶことができるのも魅力的ですね。
行政書士の実務講座については行政書士の実務講座のオススメにもまとめていますので気になる方はぜひ見てみてください。
行政書士試験の知識は実務で役に立つ?
あれだけ必死に勉強した行政書士試験で出題された「民法」「行政法」「商法」「憲法」の知識は法律の基礎とも言われる七法とも呼ばれる重要科目のため、法律の基盤となる知識は備わりますが、行政書士の実際の仕事に役に立つかと言われると正直なところあまり役に立ちません。
筆者が実務をしていて役に立った試験の知識は、「会社法」の知識が「定款の作成」くらいですね。
行政書士の業務内容は試験問題に適さない一面もあるため、仕方ないとは思いますが、
同じ士業の司法書士試験の場合は試験内容に架空の事例に応じた登記書類を作成する「登記の記述試験」があります。
この記述問題は配点も高く、試験の段階で主な業務である登記書類が作れるようになっていなければなりません。
そのため司法書士試験の知識は現場でもすぐに使えると言われていますね。
(もちろん、どんな依頼でもこなせるようになっている訳ではありませんが)
行政書士は合格後も積極的に実務の勉強を積む必要があることだけは覚悟しておきましょう。
行政書士として成功するには?
行政書士業もビジネスである以上、成功するかどうかはどうかはお客様から仕事が来るか来ないかにかかっています。
仕事が取れずに3年以内に辞めてしまう行政書士というのも多いです。
では行政書士として開業したらどのように仕事を受任すればいいのでしょうか。
方法はたくさんありますが、主な方法では以下のようなものが考えられます。
- 新規のお客様への営業活動
- 他の士業の先生からの紹介
- 知り合いからの紹介
新規のお客様への営業活動
新規のお客様を獲得したければ、飛び込み営業やチラシ、インターネット集客等の営業活動により新規のお客様を獲得していかなければなりません。
行政書士事務所さえ開業して看板を出してれば自然と近所のお客さんが来て、どんどん紹介の輪を広げて行こうと考えている人もいるかもしれませんが、
よほどの1等地に事務所を構えでもしない限り、残念ながら看板を掲げて事務所にいるだけではお客様はほとんど来ません。
その理由として考えられるのは、税理士事務所のように一般的にも仕事内容がハッキリしている業種の場合は、税金や確定申告の相談をしてみようかなとお客様の目的やニーズもハッキリしている場合が多いです。
それに対して行政書士という仕事は業務としてできることの広さゆえ資格の認知度に対してどんな仕事をしているかを正しく知っている一般の方は少ないという特徴が見られるため、どのような場面で依頼すれば良いのか分からず敷居が高く感じるというのが大きな理由でしょう。
しかし、それは行政書士として受任できる潜在的な仕事があらゆるところで眠っているということにもなります。
たとえば、行政書士という仕事を知らずに自力で申請を行う事業者の方や、遺言の作成に興味はあるけど誰に作成の依頼をしたらいいか分からないなど、多くは行政書士に依頼できるということを認知すらしていないお客様が多いです。
そのような方のニーズをとらえて魅力的な営業をすれば新規のお客様であっても仕事を依頼してくれます。
ただし、上記でも述べた通り行政書士の仕事のほとんどは専門的な知識やテクニックがなくても時間をかければ完成させることができるということは、お客様も時間さえかければ自力で書類の作成は可能だということです。
新規のお客様にとっては手間は減っても新たなコストが増えると抵抗を抱くことも多いです。
そのため、闇雲に書類が作れますとアピールをするのではなく、行政書士に依頼することでお客様にどのようなメリットがあるのかを丁寧にアピールしてお客様からの信頼を得ることが大切です。
他の士業の先生から仕事を紹介してもらう
仕事を受任する方法として、他の士業の先生と交友関係を広げて仕事を紹介して貰うという方法もあります。
新人の行政書士で成功している人はむしろ新規のお客様への営業より、こちらの方法で成功している人が多いかもしれません。
例えば今後飲食店を開業したいというお客様が税理士事務所に相談に行った際は、税務の相談とセットで飲食店の許可申請の依頼も持っているケースが多いです。
税理士の先生は決算が重なる時期などは許可申請など自分の事務所だけでは全部の仕事に手が回らなくなるということも多く、行政書士へ許可申請の仕事を回す人も多いです。
他にも司法書士の先生や社労士の先生などのところへ、行政書士の仕事が回っていくことが多くあるため、他の士業の先生と交流を深めてアピールしておけば、付随する仕事を紹介してくれることも多いです。
では、どのように他の士業の人と交流を持てばいいかと言うと、行政書士として登録することで様々な研修のお知らせが入って来ます。
研修の場には社労士や税理士など様々な資格を持っている人が集まるため、そのような場に頻繁に通って交流を増やしていくことで様々な交流をすることができます。
知り合いからの紹介
知り合いからの紹介というのはどの業界でも強く、そこから輪が広がるというのは理想的な形と言えます。
今の時代、インターネットやSNSで誰でも簡単に情報を発信できます。
フェイスブックやTwitterで行政書士の開業のお知らせや情報発信を繰り返せば、昔の知人・友人から思わぬ相談が来たりする可能性もあるため、このようなツールは有効に活用していきましょう。
行政書士の開業におすすめの本をご紹介
行政書士に関する書籍は意外と多く出版されています。
今回は行政書士の開業にあたっておすすめの書籍を何冊かご紹介していきます。
「行政書士の開業した人ににおすすめの本を紹介」の記事でも詳しく紹介しているのでこちらもぜひご覧ください。
行政書士法コンメンタール
行政書士法は行政書士として活動していくならば必ず理解しておく必要がある分野ですが、
行政書士試験では扱われない科目であるため、自分で勉強する必要があります。
行政書士法を学ぶならば「行政書士法コンメンタール」がおすすめです。
コンメンタールとは「法律の内容を条文ごとに解説を行う逐条解説」のことを言うため、行政書士法を細かくかみ砕いて解説してくれます。
この本は行政書士を開業するなら必修とも言える本のため、ぜひ一度は目を通しておきましょう。
行政書士のための遺言・相続実務家養成講座
行政書士のメイン業務と言っても過言ではない遺言・相続の分野は、
行政書士として長く活躍していけば一度や二度は関わることになるかと思います。
そこでおすすめしたいのが「行政書士のための遺言・相続実務家養成講座」です。
その名前の通り、遺言・相続に関して行政書士の実務的な役割や知識が細かく書かれています。
単純な知識だけではなく、業務の心得や面談の立ち回り方、
さらに実務直結資料として委任状などの記載例が載せられているため、実務の現場でもすぐに使える知識が詰め込まれています
駆け出し行政書士さんのための実務の手引き
行政書士のための実務講座を開講していることでも有名な「行政書士の学校」から出されている「駆け出し行政書士さんのための実務の手引き」。
行政書士の業務を幅広く解説してくれる一冊です。
1つの分野に特化した内容ではないため、これ一冊で書かれている分野の業務ができるだけの知識があるかと言われると難しいですが、行政書士業務の全体像をイメージするには良い内容だと感じました。
「こんな業務があるんだ」「この仕事はこんなことをするんだ」と、頭の中で業務のイメージをすることでどのような営業をしていくかなどが具体的になるため、業務開始前には一度読んでみることをオススメします。
まとめ
行政書士の未経験者でも独立・開業はできるかという点について解説してきました。
最後にこの記事の要点をまとめさせていただきます。
まとめ
- 行政書士は資格さえあれば比較的簡単に開業することが可能
- 未経験でも開業することはできるが、成功するためには戦略的な営業努力が必要
- 他の士業と交流を持つことが成功への秘訣
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